闇の貴公子目次
公演情報
シノプシス
制作発表記者会見
原作者の言葉
テキスト

画像
メインキング
ポスター撮り
本読み・振付
リハーサル(大阪)
パブリシティ



 
 
2001年3月8日 日本経済新聞

ミュージカル
OSK日本歌劇団「闇の貴公子」
様式美ある密度濃い舞台


 来年の創立八十周年という節目を前に、OSK日本歌劇団はいい鉱脈を掘り当てたようである。
 先日近鉄劇場で上演された「闇(やみ)の貴公子」(北林佐和子脚本・演出、伊瑳谷門取演出・振付)は、近々テレビドラマや映画にもなる夢枕獏の小説「陰陽師」をミュージカル化。幻術を用い、精霊を操る安倍晴明と美剣士の源
博雅を主人公にした伝奇ロマンで、癒(いや)し系ならぬ”妖(あや)し系とでも呼ぶべき幻想的な世界作品が面白い。登場人物もバラエティーに富んだ、シリーズ化できうる題材だ。
 異形の者が夜行する京の都が舞台。一条戻り橋で出会った博雅(洋あおい)と晴明(那月峻)の友情を軸に、鬼の正体を隠す茨姫(沙月梨乃)と博雅の悲恋、晴明と母である白孤(びゃっこ)葛の葉(若木志帆)の親子愛、邪悪な陰陽師・蘆屋道満(大貴誠)との対決が緩急良く描かれる。
 大音量のロック調音楽に鮮やかなスポットライト。愛し合う男女が戦わなければならない設定など、若年層に支持を得る劇団☆新感線の舞台を連想させる。あまりに似通った演出が気になるものの、持ち味である男役の美学は健在。見得をきるといった歌舞伎の手法やマジックも盛り込まれ、模式美ある密度の濃いステージを繰り広げた。
 主役を演じた二人はともにトップスター。洋は舞や武芸に秀でた博雅をさっそうと、那月は神秘的な晴明をクールにと、異なったタイプのヒーロー像を映し出す。どちらもきらめくような輝きには欠けたが、どこか陰のある存在感と熟練した味わいが光った。
 ただ、主演コンビの敵役となる道満が、何の目的で悪行を繰り返すのか、はっきり伝わってこないのが難点。この部分を再考した上で、続編を期待したい。
 初舞台生十四人によるラインダンス、ビートルズの曲を歌い踊るフィナーレも付き、盛りだくさんの内容に満足感があった。6月8-10日に東京、同23・24日に名古屋でも上演される。
(演劇ジャーナリスト 坂東 亜矢子)