「死ぬまで恰好つけて」 ずいぶん前のことになるが、易者に占ってもらう機会があった。初めての経験だった。 失礼ながら、その筋のことを信じる性質(たち)ではないので、軽い気持ちで聞いていたのだが、易者が発した次の言葉に冷や汗が出る思いだった。 「あなた、先生ですね。あなたご自身はそのことを望んでいないようですが…なぜって、あなたは反体制側に身を置きたがる傾向にあるから…でも、どう恰好をつけても、死ぬまで、あなたは誰かに何かを教えることになります。」 伝統芸能という業界に身を投じて45年。 確かに私は、振付・演出・舞踊指導・所作指導・演技指導・太鼓指導・邦楽作曲のみならず衣裳デザイン・空間美術にまで口をだし、それぞれの分野に教え子がいる。 そして確かに、自分自身がそのことを望んだわけではない。そもそもこの業界に入ったのも… そして確かに私は、王道を往く人生を潔しとしない傾向にある。古典を学び、その魅力に圧倒されながら、今に生きる芸術をおのれの手で創りだしてみせる、自分は既存のジャンルを教えるだけの人間じゃない、死ぬまでクリエイターだと…ひょっとしたら、この潔くない性質が、古典舞踊を出発点としながらそこにおさまらず、現在の多岐な仕事へ広がっていった原動力となったのかもしれない。 還暦をとうに超え、不惑とも言い難い歳になっても、いまだに私は、若い人を魅せ続けるオジサンでありたいと恰好つけてはいるが、できれば、死ぬまで何かを教えていたいとも最近は思う。 最後に、こんなわがままな私に仕事を与えてくださるすべてのみなさん、 そして支え、見守ってくださっているすべての人に言いたい、 ありがとう、まだまだ頑張るよ。 |
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