OSK・近鉄小劇場「Blind(ブラインド)」



 OSK日本歌劇団の若手男役、波輝一夢(なみき・かずむ)が大阪・上本町の近鉄小劇場公演のミュージカル「Blind〜耳なし芳一」で初の主役に挑む。盲目の作曲家役で、現代にワープする平家や源頼朝一族の殺人事件に巻き込まれる。小泉八雲の「怪談」に登場する芳一のキャラクターを借りた現代の怪談で、夏の暑さを忘れさせようという趣向だ。
 芳一はある港町の倉庫に迷い込み、奇妙なグループの出会う。いずれも現代ふうの名前を名乗っているが、実は歴史上の有名な人物たちである。例えば、北原沙織が演じる徳子は平清盛の娘で、壇ノ浦の合戦で源氏方に捕らわれた建礼門院。美森あいかのシズカは源義経の恋人・静、高世麻央のクローは義経、桐生麻耶の鬼若は弁慶といった具合だ。
 芳一は鋭い感覚で、次々と現れる幻想の登場人物をキャッチするが、突然、鬼若が矢で射殺される事件が起きる。壇ノ浦の戦いの真相を知ったために殺されたらしい。幻の人物に接触した芳一にも危険が迫っているのを易者(吉津たかし)が見抜いて、経文を書いた紙を渡して身体に張っておくようにとアドバイスする。以降は「耳なし芳一」の怪談のように展開する。
懐中電灯に照らされた不気味な闇の中で、プロローグのダンスのけいこに励む波輝一夢
「難しい演技、役柄をつかむのに一苦労」  
 平成六年の入団で、昨年春のあやめ池公演「オー☆マイ☆ピエロ」で準主役のマリオネットを演じ、伸びやかなダンスを見せた波輝。今回は初の主役で、盲目の青年ながらプロローグで、闇の世界に誘うダンスを展開。幻の人物が照らす懐中電灯の光の輪を浴びて、さまよう姿を表現する。
 「目が見えない演技は難しい。声がする方に顔を向けても、相手の目に焦点を合わせてはいけなし、そうすると遠くを見ることになり、手前が見えないので、転びそうになったり・・・。舞台と客席の距離がない小劇場ですから、お客さまの視線と合ったりすると思うのです。その時、ニッコリと笑ってしまえば、ぶち壊しですね」
 現代劇ではあるが、劇中で八百年から九百年前の中世の世界へ迷い込む。諸行無常の平家物語の雰囲気もあるミステリー劇で「レビューのOSKのイメージからほど遠いので、役柄をつかむのに苦労しています」と、けいこに打ち込んでいる。

 脚本・演出は北林佐和子。特異な魔界の世界を描くのを得意にしており、今回も源氏の対立から生じたおん念を現代によみがえらせる。公演は二十九、三十日の二日間で四回。立ち見席を残すだけで、完売している。 問い合わせエ06・6788・3987。